手触りはただの布でもない、革でもない、不思議な感触。
クールでスタイリッシュな外見なのに、なぜか温かみがある。
そして触れてみると、予想を裏切る不思議な感触。
今回は、朱SHU.店頭でも「何だか気になって」手にとってしまうお客様が多い、そんなtextiletellsのバッグをご紹介します。
和紙を編み上げたバッグ!?
高いオリジナリティの正体は、バッグに使われている素材にあります。
この素材、なんと和紙!
京都で作られた耐水性・耐久性に優れた和紙を、5mm巾程度の紐状にスリット加工し、職人が丁寧に編み上げて生地に仕立てているのです。
このブランドを立上げ、デザインから製作まで手掛けるテキスタイルデザイナー/アーティストの佐野さんは、「今はもう数少ない職人による、年代物のラッセル編み機を駆使する姿に感動し、他には例のない希少な素材にとても心惹かれた」とのこと。
紙でありながら耐水性と耐久性がある素材で、軽く、バッグに使われる素材として実用性にも優れています。
大胆な描画、繊細な色味のハンドペイント
「textiletells」商品のもう一つの特徴は、表面に施されたハンドペイント。 佐野さん自ら、フリーハンド&パレットナイフで大胆に、手を動かした跡の凹凸にこだわり描きます。
紙でもあり、布でもあるこの素材は、まるで絵を描くためのキャンバス。
その上に描かれる画材は、服地に絵柄をプリントする為の顔料。
百貨店アパレル向け商品も手がける染色工場による顔料は、色・質感・粘度・ラメの輝き具合など、デザイナーのこだわりを見事に再現しつつ、耐久性にも優れています。
繊細で優しく、なのに力強い、遠くからでも印象に残る「日本の和の色味」。
このバッグに、惹きつけられる魅力のひとつなのかもしれません。
「textiletells」ブランドストーリー
テキスタイルデザイナー、佐野 明代(Akiyo Sano)さんは、京都のテキスタイルデザイン事務所に所属し、百貨店に出店するアパレルブランドの特注図案を描き、京都の染色工場を介してプリントテキスタイルの制作を行う日々の中、「布の面白さをもっと発信したい」という思いが芽生えます。
珍しい、未知の布との感動の出会いが、「textiletells」=「布は語る」という造語から名づけられたブランドを立ち上げるきっかけとなりました。
一目触れた時に「素敵だな」「明日使うのが楽しみだな」と思える製品を作っていきたい、という佐野さん。
明日を楽しみに生きたい人々の、心の活力を底上げする不思議なパワーが宿る製品を作り続けています。
gamaguchi bag ガマグチ ハカマ
スマートフォンと小物を収納できる、がま口のショルダーバッグです。
牛革を使用したショルダーストラップは6段階に長さ調節可能で取り外すこともできます。
本体には耐水性のある紙糸(しふ)を使用し、内側には小さなポケットを付け使いやすさに配慮。
下部には顔料をデザイナーの佐野さんご本人が一点一点ハンドペイントし、デザイン性と耐久性を持たせました。
textiletellsではこのようにバッグ下部にハンドペイントしたデザインを「ハカマ」と呼んでいます。
当店でお取り扱い中の色は朱と、白の2パターン。
朱色は朱 SHU.の店名にちなんで佐野さんが考案してくださった当店オリジナルカラーです。
藍染シリーズ
藍染めシリーズは、藍染めされた和布を使ってバッグを仕立てる為、表面にでる藍色が1点1点異なり、それがよりユニークでよい味わいを出しています。
textiletellsブランドのために染色されている藍は、ジャパンブルーとも呼ばれ、化学薬品を一切使用しない本藍です。
蓼藍(たであい)を原料とする蒅(すくも:藍の葉を発酵させたもの)、灰汁(あく:木灰とお湯を混ぜた上澄み液)、貝灰、麩(ふすま:小麦の外皮)、日本酒のみを使用して染色液を作る「天然灰汁発酵建て」という日本古来の染色方法。
textiletellsの和布の藍染めは、京都の伏見区で藍の栽培から染色までを行う職人、Draw Dots Dawnの西村さんによるもの。京都の郊外にある畑と工房で、栽培、収穫、藍を加工して染料を作り、染め上げるところまで、すべてが西村さんの手で行われています。
こちらのバッグは、ムラクモ染というランダムな柄で染めているもの。ほかにも染め方を変えて青の美しいグラデーションを活かしたデザインも。
自然がもつ色彩もtextiletellsのバッグには欠かせない美しさを表現しています。
※こちらは店頭のみでのお取り扱いになります。
藍染を体験してみました!
藍色への好奇心から始まった探求の旅
店主の木村です。くすみのないこの藍色はどこからきたのだろう、と、はじめてtextiletellsのバッグを見た時にわいた好奇心。
それから実際に当店でお取り扱いするまで1年ほど間があいたのですが、ずっと印象に残っていて、この春、バッグ生地の藍染をされたDraw Dots Dawnの西村さんが主催する藍の種まきイベントに、家族で参加させていただきました。
そして、種をわけていただき、自宅に持ち帰ってプランターで育てることに。
並行して、ちょうど西村さんが講師をされていた「藍を愛でる」というオンライン講座に参加する機会もあり、藍を探求してみることにしました。
ジャパンブルーへの路
インディゴは世界最古の天然染料で様々な国や地域で見られます。日本には約1200年前にシルクロードを経由して伝わり、時代を重ね、日本の民族文化に溶け込みました。
日本で最初に藍を染めたのは出雲族といわれており、もともとは貴族の衣服に使われていましたが、江戸時代になると綿花の栽培が盛んになり、藍染めが綿を染める最も一般的な染色方法となります。
庶民の衣服に最も馴染みのある色で、その機能性から当時はベビー服から消防士の上着としても使われていました。
藍には抗菌・防虫効果・防火・保温などの優れた特徴があり、染色以外にも生薬としても使われています。
そして、近代になって日本が開国したとき、人々の衣服によく見られた藍の色が「ジャパンブルー」と呼ばれました。
藍を育て、藍で染める
日本で藍染めに使われる蓼藍は一年草で、春に種をまくと日光のよく当たるところで、土が乾かないよう適宜水やりを行うと、梅雨と夏の間に急速に成長します。
成長して葉が茂った藍は茎を地面から10㎝くらいの高さまで残して切り取り、葉を染色に使います。
その後、残った茎から葉が再び成長し、育った葉は再び染色に使用できますが、2回目、3回目となると1回目の葉よりも含まれる色素が薄くなるそうです。
たたき染めと生葉染めにトライ!
自宅の藍はというと、なんとか藍染めに使えるほどに成長し、夏休みの子供達には格好のタイミングでの藍染め体験。
生の藍の葉を使った染め方は2種類、たたき染めと生葉染めをしてみました。
たたき染め(麻・綿・絹・ウール)
- 好きな生地の上に葉をおき、たたく部分をセロハンテープで全て覆うように固定します。板や地面など硬いものの上におきましょう。
- 上から木槌や金槌を使って葉の繊維が壊れて水分が生地にしみこむようにしっかりたたきます。
- 生地の裏をみて染まっているのが確認できたら、テープと葉をはがします。
- 空気にあたると青色に発色するので、15分以上空気にさらします。
- 洗って乾燥させます。
生葉染め(シルク・ウール)
- 摘みたての藍の葉に対して13倍の重さの水を用意します。(今回は葉23g、水300ccで)
- ミキサーまたは手で葉を細かくちぎり、水と混ぜます。
- 素早く葉をザルなどでこして取り除き、染色液の中に染めるものを15分つけます。
- 水を切り15分ほど空気にさらした後、色が出なくなるまで水洗いし、乾かします。
まとめ
どちらも初めての試みですが、藍の葉っぱを利用して手軽にできた上に、きれいに染めることができました!
先日、着物をよくお召しになる方から伺った話ですが、西陣織の帯に絹生地を虫から守るために藍染めの糸を織り込んでいるそうです。
藍染めには色と一緒にその効能も染めこまれている、その色彩の美しさだけでなく、機能を最大限に活かした実用的な使い方ができるのが藍の魅力だと感じます。
現代では天然の藍染めの衣服を着る機会は少ないですが、ジャパンブルーをもっと暮らしに取り入れたいものです。
残りわずかとなった夏休みですが、もうしばらく、藍の葉で染めものを楽しみつつ、このあと秋に咲くピンク色の花と最後に種をとるまで、あますことなく藍を愛でたいと思っています。